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自分の言葉でほしい未来を描く。地域おこし協力隊としてさとのば大学に参加した、松原功さんの学び。


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やりたいことをやるって難しい。そう感じたことはありませんか?


やりたいことはなんとなくあっても、それをどう形にしたら良いかわからなかったり、行動する勇気が出なかったり。 さとのば大学には、そんな難しさを感じながらも「本当に自分がやりたいこと」に仲間とともに挑戦してきた卒業生たちがいます。


実際にどんな人がどんな想いで参加し、どんな学びや変化を得ているのか。 昨年半年コースに参加した卒業生、松原功さんに、インターン生の宮本がインタビューをしました。




松原さんのプロフィール写真

 

目次(クリックでタイトルに移動します)

 


さとのば大学受講前の、協力隊としての葛藤


さとのば大学を知ったきっかけはなんでしたか?

私が地域おこし協力隊をしていた茨城県では、任期2、3年目で希望する人が研修として受講することができました。「ソーシャルデザイン」、「地域おこし概論」といった授業のキーワードが引っかかり、楽しそうだなと感じたため、受講を決めました。


協力隊として、当時はどんな状況でしたか?

ちょうど新型コロナウイルスの影響で、地域のお祭りやイベントなどの開催が危ぶまれる状況でした。協力隊として地域により深く関わりながら3年目を終えたいと思っていたのに、それができないんじゃないかと不安に思う気持ちが強かったなと思います。 退任後のこともまだ漠然としていて、悩みの種ではありました。やりたいこととしては、協力隊として行っていた森林や狩猟の活動がありましたが、それだけでは生活するのが難しいだろうからどこかに就職しようと思っていました。




自分の言葉で語り、想いを明確にする


さとのば大学を受講してからは「豊かな暮らしは、豊かな森林(もり)からプロジェクト※」を行ったそうですね。どんなふうにプロジェクトを形づくっていったのですか? (※自分たちの暮らしをベースに森林に関わるプロジェクト。椅子づくりや地域の人向けの間伐体験会の開催に挑戦。)

森に関わる活動は受講前からやっていたのですが、その目的と自分とがあまり繋がっていない感覚がありました。日本の森は課題だらけだから解決しなきゃという使命感にかられていたけれど、自分とどう繋がるのかがわかっていなかったんです。


さとのばを受講して、自分の内面と向きあう時間が増えると「自分はなんで森が好きなのか」「森が好きなことって自分とどう繋がるのか」「どういう暮らしがしたいのか」というのが見えてきました。 私が森を好きなのは「森すげえ!自然すげえ!」と感じさせるような自然の壮大さや、木に囲まれた暮らしの豊かさゆえ。そう気づけたので、課題解決のためではなく、自分の気持ちに軸を戻して、椅子づくりや間伐体験会を行いました。


木の椅子の画像です
功さんが作った椅子。子どもの頃大好きだった木工に再挑戦したそう。

間伐体験会は受講前にも開いたことがあったのですが、木工で使うための材料集めと思ってやれるようになったことで、より楽しめるようになりました。 今後は、自分たちで伐採した茨城産の木で一から家具をつくりたいと思っています。そのために今、家の離れに木工所をつくっているんですよ。それを売るのももちろんだけど、自分たちの暮らしで使いたいなという気持ちで、活動を続けています


松原さんと地域の皆さんが写っている画像
間伐体験会にて、地域の皆さんと。

すごい!自分と繋がった目的を意識できたことで、森と関わる活動へのワクワクがより高まったんですね。自分の内面と向きあう時間ってどんなものだったんですか?

特定の講義でというより、さとのばってどの講義でも、講義の前後でも、「今自分はどういうふうに感じているか」を自分の言葉で伝える機会が多いんです。初めは緊張したし今でも難しいなと感じるけど、どういう言葉で伝えても大丈夫と思える空気感のなかで、自分の言葉で想いを伝えていくうちに、自分の内面をしっかりと見れるようになりました。


協力隊がさとのば大学を受講すると聞くと、とにかくプロジェクトを回していくというイメージでした。自分の言葉で自分の想いを語ることで、軸を見出すのがポイントだったんですね。

さとのばで一番得られたと感じたのが、自分の軸みたいなものです。軸はもともとあったんですが、授業でいろんな考え方を学び対話していくなかで、「自分はどんな未来を描きたいのか」やそれに向けてできること、やりたいことをより明確にできました。


発表時のプレゼンテーション画像
最終発表会の様子。自分の言葉で学びや変化を伝えます。

人間全く同じ経験や学びをした人はいないからこそ、その人の中でしかわからない複雑な感情があると思うんです。だからその時の自分の状態や感情を、良し悪しの判断は置いておいて、唯一無二のものとして愛でることができるといいなと思うし、私もその人自身の感情に寄り添っていたいという想いがあります。 実際これまでも、周りの人が悩んだり嘆いたりしながらも、自分の状態と向きあい、自らの力で次の段階に進もうとしている姿を見て勇気や元気をもらうことが多くありました だから「自分や周りの人々が、自身の良し悪しをありのままに受け容れ、好きなこと・やってみたいことをしっかり伝え合いながら、自信をもってチャレンジへの一歩を踏み出せる未来」という言葉で、ほしい未来を描きました。 それを掲げておくだけでも自分の行動にちょっとずつ変化が起こってくるなと感じたので、ほしい未来が明確に描けるという点も、さとのばの学びとしてすごく大きいなと思います。


なるほど。ほしい未来があるからこそ、実践を積み重ねられたのかなと感じました。

身近な人から地域へ。ほしい未来が繋げるもの

もうひとつのプロジェクト「自身の価値を感じよう!シェアスペースプロジェクト」も、ほしい未来に繋がっているんですか?

もともと、妻が自宅兼マッサージサロン、シェアスペースとして「おへそ」という名前の場所をつくっていたんですが、妻自身が本当にやりたいことがよくわからなくて、使い方を悩んでいたんです。一番身近な存在である妻に元気になってほしかったし、さとのばを通して対話の大切さも実感していたので、どうしたいのか、毎日対話の時間を設けていきました。 そのなかで、妻自身も元気になりつつ、おへそに来る人も自分らしさや本当にやりたいことを取り戻せるような空気感のある場所をつくっていきたいというこたえが出て、始めたプロジェクトでした。 改修ワークショップを全3回行ったところ、協力隊の仲間、隣町の人、市議会議員、東京から妻の知り合いなど、本当にいろんな人が来てくれました。


薪ストーブの周りに集まる人々の画像
改修ワークショップにて。薪ストーブ!素敵です。

地域の人はおふたりのプロジェクトに関わる中でどんな変化があったと思いますか?

ワークショップの技術指導者として、ある大工さんが毎回参加してくれたんですが、「自分でも人が集まれる環境をつくりたい」と言って、参加したあと実際に活動を始めていました。もともと自分でもいろいろやってみたいという気持ちをもっている方でしたが、より加速し始めた感じがあって。 お互いの活動に協力し合っているし、何もなくてもおへそに来てくれる関係性が築けています。大工さんはおへそに来るとすごく嬉しそうにしてくれているので、ワークショップを継続したなかで多少なりとも変化はあったのかなと思います。


さとのば大学を受講して、地域での活動の目的が課題解決から自分や身近な人の自尊心を高めることに変化。そして自分達の本当にやりたいことをやるようになったことで、「やりたいことをやる」空気感が地域の人にも広がっていっているのが伝わってきました。

ウッドデッキでくつろぐ人々の画像
おへその外の様子。自然に囲まれた優しい空気感が伝わってきます。

自分の気持ちに従うことが、地域で暮らし続けるカギになる


最後に。地域おこし協力隊の方は退任後のことを悩まれる方も多いのではと思うのですが、現役協力隊の方に向けて伝えるとしたらどんなメッセージになりますか?

漠然とした言葉にはなってしまいますが、自分の気持ちに従うことってほんとに大事だなということは感じています。 協力隊って地域の方と関わることが多いから、「あの人がこう言っているからこうしていこう」というふうに巻き込まれる方も多いと思います。たしかに周りの意見を受け入れることも大事だけれど、地域でこれから先ずっと暮らしていくためには、「自分がどういうふうに生きていきたいか」を、3年のうちに確立することも必要なのではと思うんです。


功さんご自身が今も地域で暮らしていきたいと思えているのも、自分の気持ちに従えているからなんですか?

そうですね。その気持ちももちろんありますし、その気持ちでつくってきた今の環境を好きになってくれる人たちもいるので。これから私たちの想いを超えて、おへそも木工所もみんなの想いになっていくだろうなと思っています。 そう考えるとやっぱり、ここでいろんな人と交流しながら自分たちのことも続けていきたいし、他の人のプロジェクトも、応援してもらったからこそ応援したいです。これからもこの土地での暮らしを続けて、私たちも他の人も自分らしく生きていける環境をつくっていきたいなと思っています。


森の中で活動をする松原さんの画像
プロジェクト中の功さん。生き生きした様子が伝わってきます!

おわりに


読んでくださった皆様、お話してくださった功さん、本当にありがとうございました!

私自身、何かをしようと思ってもつい、意味があるだろうか、人の役に立つだろうかと不安になってしまいます。 けれど功さんのお話を聞いて、自分の心からの想いに従って行動してこそ、周りの人に想いが通じていくこと、そして自分の想いは、誰かと対話していくことでより明確になっていくことに気づくことができました。




※本記事は2021年6月30日にnoteにて公開した記事の再掲です。

情報は執筆時のものとなりますのでご了承ください。


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