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教育熱心な家庭の子どもほど伸び悩む!?マザークエスト 中曽根 陽子さんが語る教育の変化とは?

2022年6月25日、数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストで、編集企画会社マザークエスト代表の中曽根陽子さんをゲストのお招きして、近年の学校教育や入試改革について解説するオンライントークイベントを開催しました。 

十年一昔とはよくいいますが、高校生の子どもを持つ方々にとって、入試も進路も自分達の時代とは大きく変貌を遂げています。変化する時代の中で、より良い学びを子どもたちに受けさせるにはどうしたらいいのか。中曽根さんは「あえて親が手を出さないこと」が重要だと説きます。その真意とは・・・?お話の内容をレポートします。


▶︎お話の骨子

・VUCA&web3の時代、社会で求められる力が変わっている。

・学校教育は、正解を教え込む教育から主体的な学びへシフト。

・大学受験では、国公立も私立も「総合型選抜」の割合が増えている。偏差値的な学力よりも「物事に主体的に取り組む力」や「学んだことを人生や社会に生かそうとする姿勢」が重視される。

・学生に必要なのは「自分は何が好きか・何がしたいか・何ができるか」を知る「探究力」と、経験したことのないことや困難に出会っても挫けずに前に進む「失敗力」。

・保護者は、子どもの主体性を伸ばすためにあえて手を出さないことが重要。



▶︎社会の変化で変わる“必要な力”

ご自身も2人の娘と3人の孫がいる中曽根さん。子育てをした親の目線で、学校教育や家庭教育について取材をし、『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの探究力の育て方』(青春出版社)など著書も多数執筆されています。そんな中曽根さんは「変化が激しいVUCAの時代。いま、日本の学校教育は大きく変わろうとしている」と言います。

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、社会や企業経営にとって先行きの見通せない時代を指します。そこに、AIやブロックチェーンなどテクノロジーが社会経済に与える変革(web3と評されます)が起こって、私たちの働き方も変わらざるを得なくなっているそうです。

例えば、新卒で入った会社に定年まで勤める終身雇用は過去のものとなり、転職が当たり前(マイナスではなくプラスになる)になっているとのこと。

確かに30代前半の私(ライター)の周りでも転職は当たり前で、大手から中小やベンチャーに転職する抵抗感も上の世代より少ないように感じます。会社に寄りかかる生き方ではなく、キャリアを持ち歩いて自分の責任で育てていく生き方は、変化する時代の生存戦略と言えるかもしれません。

そして、この社会の変化で、個人に求められる力も変わってきているとのこと。社会の変化に対応できる柔軟性と、自ら考える思考力と行動力が求められます。


一方で中曽根さんが課題に上げるのは、「社会に出てくるワカモノは、従来型がほとんど」だということです。「大人しく従順で、他人から依頼されたことはできる。けれど自分で動くことはできない」。中曽根さんは「ワカモノではなく教育に問題がある」と説きます。




▶︎キーワードは「探究」〜教育と大学入試改革〜


そのような問題意識は教育行政を担う人々の間でも共有されていて、近年では「正解を教え込む教育から主体的な学びへのシフト」が起こっているそうです。

「一番わかりやすいのは大学入試を変えること。コロナで多くのことが延期されてしまいましたが、新学習指導要領の対象となる2024年度の入試から本格的な改革が行われます。入試問題の一部では、すでに思考力・判断力・表現力を問う問題に変わってきていて、入試に対応して高校の授業も考えるプロセスに重きを置くようになっています」


文部科学省によると、

「「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。およそ10年に1度、改訂しています。子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています」とのこと。 (出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/idea/index.htm


私たち大人は、つい自分の高校時代のことを振り返って教育を語ってしまいがちですが、世代が変わると教育の常識も変わります。親は自分の教育観を当たり前とせず、現在の学習指導要領を知るなど、状況把握をする必要があるでしょう。


教育改革のキーワードは「探究」だと、中曽根さんは解説します。

「探究とは、自分で問いを立てて答えを見つけ出していくプロセス。正解はひとつではありません」

そうした改革の動きを背景にして、一般入試とは別に実施されるいわゆる「年内入試」(学校推薦型選抜と総合型選抜)の比重が高まっています。入学者比率は国公立大学で全体の20%、私立大学で57%もあり、国立大学協会では30%を目標値としています。また、私立大学では、従来は学校推薦型選抜としていた入学者枠を総合型選抜に変更している大学も多いとのことです。

注目される総合型選抜は、以前はAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれていた入試で、2021年から名称と中身が変わりました。

主に志望理由書などの書類、面接、小論文などで選抜が行われる入試で、志望分野に関する学習への意欲など入学後の学びに関連する部分が問われます。

「今後は入試でも偏差値的な学力より、物事に主体的に取り組む意識や、学んだことを人生や社会に生かそうとする姿勢が重視されます。つまり、自分は何が好きか、何がしたいか、何ができるか探究していくとが、将来の道を拓くことに繋がる時代になったのです」


ちなみに、地域留学でのプロジェクト学習をコンセプトにした「さとのば大学」の入試も、総合型選抜に準じた形式をとっていて、志望理由書とオンライン面接で合否を決定します。大学によって入試で重視する項目は異なりますが、さとのば大学の場合は、大学での学びを自分自身の人生にどう活かしたいか、学びを一方的に受けるだけでなく自ら作っていく主体性があるかどうかに注目しています。



▶︎子どものために親ができるのは、“あえて手を出さない”こと


今の時代、ワカモノに必要なのは次の2つの力だと中曽根さんは説きます。

①「探究力」・・・自分は何が好きで、何がしたくて、何ができるのかを探して、自分で考え、選んで生きていく力

②「失敗力」・・・経験したことないことや困難に出会った時挫けずに前に進む力

子どもに失敗させるのを嫌がるのが親心ですが、子どもが与えられることに慣れて受け身になってしまうのは避けなければなりません。親は「あえて、手を出さない」。これが大切です。「これからは、教育熱心な家庭の子どもほど伸び悩む」と、中曽根さんは著書や講演で繰り返し伝えているそうです。

進路など大事なことを自分で決めてきた子どもほど幸せになれることは、神戸大学と同志社大学による研究で明らかにされています。

困難に直面しても諦めずに頑張れる子どもの親は、「子どもの意欲を大切にする態度」「子どもが自分で考えられるように働きかける関わり方」をしていると、中曽根さんは言います。

「子どもたちはみんな未来を作るクリエイターです。大切なことは、本人はもちろん、親も視野を広げアップデートしていく姿勢を持つことです」




▶︎日本版ミネルバ大学〜「探究力」「失敗力」を伸ばすプロジェクトベースドラーニング〜


以上、中曽根陽子さんに、「社会の変化」「教育の変化」「子どもが身につけるべき力と親の姿勢」について伺いました。


「探究力」と「失敗力」をどうやって身につけるのか。その方法の一つが、さとのば大学の提供する地域でのPBL(Project Based Learning)と言えるでしょう。

さとのば大学は、新潟産業大学の通信教育課程「ネットの大学managara」と提携し、経済経営学の学位が取得できる4年制プログラム「さとまなプログラム」(ネットの大学managara 地域イノベーターコース)を開講しています。オンライン授業と地域でのPBLを組み合わせたアメリカの難関大学「ミネルバ大学」と形態が似ていることから、「日本版ミネルバ大学」と評されることも多くなってきました。


さとまなプログラムの学生は、提携する全国10の地域に1年ずつ滞在し、オンラインで授業を受けながら地域でプロジェクトを企画実施します。例えば、「スポーツ×教育」をテーマに子ども向けのスポーツ教室を主催する、「森林資源の6次産業化」をテーマに木製アクセサリーを制作販売するなど。学生ひとりひとりの好きなこと・得意なことと、社会の需要が重なるところにプロジェクトが生まれます。

最初は、ピクニックを企画する、地域の人にインタビューをするなど、軽いプロジェクトからスタートして、企画・実施・検証のサイクルの中でプロジェクトのレベルを少しずつ上げていきます。

また、ネットの大学managaraのオンライン授業でビジネスについての知識をインプットし、さとのば大学の提携する地域で実践しトライアンドエラーを繰り返すことで、使えるノウハウとして身体に染み込ませていくことができます。


学生と地域の関係は、学生が地域というフィールドを実習地としてお借りする関係です。地域コーディネーターたち地域の協力者は、一つの地域のためではなく、より大局的な視野で共創人材を育てるために力を合わせています。

学生が関わる相手は、地域に住む生身の人間。世代も人生経験も価値観も様々です。10代~20代はじめの学生たちは、時には迷惑をかけて怒られたり、不条理に直面して悶々としたりすることもあるでしょう。プロジェクト学習に失敗はつきものです。近くに親はいません。自分で決めたことは自分の責任で全うする、そんな厳しい世界でもあります。

ただし厳しいばかりではありません。失敗して落胆することはあっても、地域コーディネーターやオンラインで繋がる講師が、(やりすぎない程度に)丁寧にメンタリングを行うなどフォローをして4年間、挑戦を支え続けます。

高校時代までに「探究力」「失敗力」を身につけて、やりたいことがはっきりとしている子どもは、先に専門教育に進んでも良いかもしれません。一方で、時間をかけるゆとりがあるのであれば、人生100年時代と言われるいまだからこそ、大学時代はしっかりと「探究力」「失敗力」という人生の基礎力を養う時間にあてることをお勧めします。


さとのば大学では週に1度、オンラインで説明会を実施しています。ご興味をお持ちいただけた方は、まずはお気軽にご参加ください。











中曽根 陽子(なかそねようこ)

マザークエスト代表

出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、編集企画会社を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。その後、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。ポジティブ心理学コンサルタントも取得し、最近は子育て教育探究ナビゲーターとして、親に寄り添った発信をしている。最新刊『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの探究力の育て方』(青春出版社)他著書多数。


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