日本全国の連携地域を1年ずつ旅して、地域で実際に暮らしながら学ぶさとのば大学。場所に縛られず、地域でのフィールドワークとオンライン講義で日本各地に仲間をつくることができる新しい学びの場です。
その学びは、地域だからこそ実践的に学べる「プロジェクト学習」と、ほしい未来をつくるためのインプットを全国の仲間とともに学び合える「オンライン対話型講義」のハイブリッド。
でも、「実際にはどんな授業があるの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。そんなさとのば大学の魅力や面白さを体感してもらうべく、7月30日(土)と7月31日(日)にオープンキャンパスをオンライン開催しました。
今回は、さとのば大学で開講している講義を体験できるプログラムやテーマ別のトークセッション、受講検討者のための個別相談など様々なコンテンツをご用意。
皆さんに楽しんでいただいたいくつかのプログラムについて、こちらのコラムでもご紹介したいと思います~!
社会課題をゲームで学ぶ!?
オープンキャンパス1日目、最初のワークショップとして開催したのは、ゲームを通じて社会と自分のつながりを知ることができるプログラム。
ビジネス研修にも使われるシミュレーションゲームを開発している株式会社HEART QUAKEの千葉順さんを講師に、SDGsとシステム思考を学べる「共有地の悲劇」というゲームをオンラインで体験しました。
SDGsの17の目標のうち、14番目「海の豊かさを守ろう」がメインテーマとして設定されたゲームですが、実は様々な課題が複雑にからまっていて一筋縄ではいかないということを遊びながら学べるツールになっています。
しかも、Zoomでオンライン対話をしながら、1つのゲームをみんなでやるチーム戦。
━━本当に成り立つのかな…?
と、ちょっぴり半信半疑のスタートでしたが、千葉さんにナビゲートしてもらいながらゲームを進めるにつれ、オンラインであることを忘れるほどその場がひとつになっていました。
参加者の皆さんも、楽しみながら学んでくださっていた様子でした。
ここからは、実際にワークショップに参加してくださった方の体験レポートをお届けします。
レポーターは、さとのば大学の2期生であり、現在は環境系のベンチャー企業で働きながら、プロボノとしてさとのば大学をサポートしてくださっているじんさんです。
SDGsを学ぶため、漁師になってみた
今回僕が体験したのは、プレイヤーが二人一組の漁師になって、漁獲収益の高さを競うというゲームです。
「魚を獲って収益を上げる」というシンプルなルールでありながら、1ラウンドの漁獲量によって相場が変動することや、ラウンド毎に必ずゴミが増えてしまうこと、奇数ラウンドには漁場の魚が倍増するが、空きマスがないと魚は増えないことなど、細かく作りこまれています。
乱獲による廃業や海中ゴミの問題など、SDGsの14番「海の豊かさを守ろう」について体験的に学習できる設計となっているのがよく分かりました。
僕は参加者の学生とペアになり、ゲームがスタート。
1ラウンドごとに「魚を何匹獲るか」「海中ゴミを何個回収するか」を決めていきます。
魚は1ラウンドに1匹以上、最大3匹まで獲ることができ、獲った分だけ収益が上がります。一方、海中ゴミは1ラウンドに0個から最大2個まで回収することができますが、こちらは拾った分だけ所持金が減ることになっていて、わざわざお金をかけてゴミを拾わなければなりません。
2人で話し合って、
「まずは魚を獲れるうちにたくさん獲ろう!」
という話でまとまり、最初は魚をMAX3匹獲り、ゴミは拾わないという選択をしました。
2ラウンドを終えて、収益の順位はトップタイ。しかし、漁場全体の魚の数は半減しており、海中ゴミは増え続けています。
ラウンド間に行われる経過報告で、ほとんどのチームが漁獲のみに集中している様子が分かりました。このままだと、漁場から魚が消えて全プレーヤーが廃業(ゲームオーバー)となってしまいます。
僕たちは、3-4ラウンド目は漁獲数を制限することに決めました。
他のプレーヤーの様子を見ることにしたのですが、4ラウンド終了時点でゴミはスタート時よりも増え、魚の数は半数以下になっていました。
実社会だったらどうだろう?
この時、ゲーム終了まで残り2ラウンド。このままだと僕たちはトップに追いつけないという盤面でした。ここで、ペアと一緒に話し合ったことが、ゲームの本質だったように感じます。
このゲームは、6ラウンド終了時点での漁獲収益の高さを競うものです。
でも、僕たちの実社会に置き換えて考えるならば、「終わり」はあるのでしょうか?自分たちの漁獲量を優先した結果、失うものはないのでしょうか?
・・・そう考えた結果、ルール上は最下位だとしても、持続可能性と信頼感でトップになろう!と、僕たちなりの方針が決まったのです。
最終結果はゴミ収集数3位タイ、漁獲収益は4位という結果に終わりました。つまるところ、最下位です。
実践的な学びの大切さ
ゲームを進めていくうちに、ペアを組んだ相手の考え方やスタンス、他のプレーヤーとの方向性の違いや、それに対する自分の感情の変化を感じることができました。
また、「収益を上げる」という競争環境に置かれた状態で、異なる価値観を持った相手と関係性をつくることの難しさも実感しました。
印象的だったのは、ゲームのおわりに講師の千葉さんから
「本来このワークはこれからが本番である」
と教えてもらったことです。本番では、収益格差や課税などの要素も加えてゲームを進めていくのだそう。
僕たちペアがゲーム中に話し合ったように、実社会においては、決められた数値やルールだけでなく、関わる多くの人の人生背景や価値観も複雑に絡んでくるのです。その中で、自分の意向を100%通すことはとても難しいことなのだと改めて思いました。
考えてみれば、社会人になったばかりの頃、社会の複雑さを知らなかった僕は、見えない壁にぶち当たって初めてその複雑さを痛感することになりました。そんな時に僕を支えてくれたのが、さとのば大学をはじめ、メタ認知や課題解決につながる学びを得られる機会に恵まれたことでした。
だから今の僕があると思っていますが、もしそうでなかったとしたら、今僕はどのような世界観でこの社会を捉えていただろうかと、考えさせられました。
さとのば大学では、地域留学という形で初めて訪れる場所で自分が決めたプロジェクトを進めていきます。地域での社会生活の中で、プロジェクトを実践しながら、そこで役立つさまざまな学びを提供してくれるのがさとのば大学の醍醐味だと思っています。
社会の複雑さを知り、その中で自分らしく生きる方法を学べるというさとのば大学のコンセプトが、自分の生き方にフィットする人はきっとたくさんいるのではないかと思います。
ぜひ、そういった人にさとのば大学の存在を知ってもらえると嬉しいなと改めて思いました。
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