すぐに答えは出なくとも、今の自分が挑戦できることに向き合う。 >さとのば生 プロジェクトレポート #01





自分が自分をリードしていくとき、これまでになかった迷いや葛藤に出会う。


さとのば大学には、「本当に自分が願うこと」をマイプロジェクトとして形にしていく中で、様々な壁にぶつかりながらも仲間とともに挑戦してきた卒業生たちがいます。


実際にどんな人がどんな想いで参加し、どんな学びや変化を得ているのか。

さとのば生のプロジェクトを紐解く「さとのば生 プロジェクトレポート」の第一弾として、2022年2月のさとのば大学「春季特別講義」に参加した卒業生、瀬川玲さんにインタビューしました。


聞き手は、同講義にて「ラーニングアシスタント」と呼ばれる学びのサポート役を務めた黒澤が担当します。


瀬川 玲(せがわ れい)さん

2002年、群馬県生まれ。早稲田大学人間科学部1年。

人と人が関わったり、つながりが生まれていくことに興味がある。地域での暮らしや子どもと遊ぶことが好き。2021年夏にさとのば大学が主催した2泊3日の「ラーニングジャーニー」プログラムにも参加。春季特別講義の期間中は岡山県西粟倉村に滞在していた。




やりたいことに邁進している先輩に憧れて


さとのば大学のどこに魅力を感じて受講を決めましたか?

ずっと実家や学校の外へ出ていくことが少なかったので、大学の間はいろんなところへ飛び込んでいきたいなと考えていました。海外にも興味があったのですが、かっこいいなと思っていた大学の先輩からさとのばのことを勧めてもらって参加を決めました。私はただの旅行だとモノとお金の関わりしかできないなと思っていて、それはあまり求めていなかったんです。一方でさとのば大学は、人と人の関わりを感じられそうだな、というところで心を惹かれていたような気がします。



さとのばに来る前は、どんな人でしたか?

イエスマン」かな。(笑) 

誘われたことには予定さえ合えばいつものっかるような人でした。自分がそれをやりたいかどうかはそんなに関係なくYESと言っていたので、内省をする時間もないくらい予定を詰め込んでいました。暇になるのが嫌だったんだと思います。きっと、小学生の頃から高校時代まで、ずっと暇のない生活をしてきたからかもしれません。やることがない状況では、どうしていいかわからなくなっちゃうような感覚がありました。




自分につながったマイプロジェクトってなんだろう


さとのばでは、どんなプロジェクトに取り組みましたか?

一緒にモルックしよう!プロジェクト」をしました。モルックはフィンランドの伝統的なゲームをもとにつくられた、木の棒を投げるボウリングのようなスポーツです。遊ぶのに必要な木の棒を作るところから始めて、地域の広場や、週1でお手伝いに行っていた学童でモルックイベントを開催したりしました。



ボールを投げて棒を倒すシンプルなルール。


そのプロジェクトはどんなふうに生まれましたか?

最初に考えていたのは、環境問題にアプローチできるようなプロジェクトです。でも、環境問題に興味をもった理由をじっくり見つめていったとき、私は環境問題そのものというよりは、それに取り組んでいる知人のことが好きで、その人を応援したいという気持ちだったことに気づきました。その段階で、これは自分自身につながった「マイプロジェクト」にはならないだろう、と思って方向転換したんです。


改めて自分と向き合いましたが、結果的には、目的やほしい未来は曖昧なままにプロジェクトを始めていました。先にほしい未来を描いて、そこへ近づくための手段としてのプロジェクト、というやり方がまだうまくできなかったんです。けれど、さとのば大学の期間という制限の中で、まずは自分がやってて楽しい、人に話してワクワクするようなことをやってみることからチャレンジしようと決めて動いてみました。



いろんな葛藤もありそうですね。やってみてどんなことを感じたり、気づきがありましたか?

純粋に楽しかったなと思います。それはすごくよかった反面、モルック自体が目的になっているような感じはずっとしていて、モヤモヤする気持ちもありました。私が一番苦しかったのは、自分が何をしたいのか考える時間でした。何かをするときに、目的や理由を深く考えることはこれまでしてこなかったので、「別にやらなくてもいいけど、本当にやりたい?あなたがやるの?」と問われるとわからなくなってしまって。


逆に、ひとまずやってみるんだと決めてからはどんどん動ける自分にも気づきました。動いている時は楽しくて、地域メンターの方にも「れいちゃんは考えるより先に身体が動くよね」とフィードバックをもらいました。


あとは、イベントを複数回やってみたことで、こういう空間をつくりたいな、という要素が発見できたのは私にとって大きなことでした。大学期間中じゃなくてもいいから、こういう空間を今後もつくっていきたいな、と思っています。



玲さんが講義で発表した「好きな空間」についてのスライド


他にも、さとのば大学を受講している間に印象に残っていることはありますか?

期間中も、今も強く感じていることが、これまでは何を言ってもOKで応援してもらえる環境にいたんだなということです。深く考えていなくても、周りが協力してくれて、あえて言えば甘やかされて過ごした部分があったなあと気づきました。


マイプロジェクトを進めていくために他の人に協力をお願いする場面で、理由や目的、必要性をきちんと伝えることは必要なんだと痛感しました。私の中では、そのへんが固まっていなくても力を貸してくれるんじゃないかと期待していたところがあったので、正直その瞬間は「どうして!」と反発する気持ちも生まれていましたが、今は相手の状況も理解できるようになり、厳しいことではなく普通のことを言われていたんだと思えるようになりました。


普段生活している範囲を飛び出してみたことで、まだ自分ができていない部分を知ることができ、これまで当たり前だと思ってきた周囲のサポートがありがたいものだったんだと気づいたんです。



同時期に西粟倉村に滞在した「さとのば生」の仲間たち。


立ち止まって見えることもある


さとのば大学の講義を終えて、最近はどう過ごしていますか?

今は、特に何もせず過ごしています。良くも悪くも慎重になったんです。始める前に、「これは自分がやりたいことなんだろうか?」と立ち止まって考えるようになり、時にはNOも言うようにもなりました。


これまでのフットワークの軽さは減って考え込むことも増え、何も考えずにやっていた頃は楽だったのに、と思うこともあります。


心からやりたいことが見つかったわけではなく、迷うことが多くなって少し嫌な気持ちにもなります。でも確実に今の生活の方が余裕があって、自分と向き合う時間が増えたのは長い目で見ればよかったのかな、とも思います。


それでもまだ、スッキリしないところがありますが。(笑)



そっかそっか。(笑) さとのば大学での経験から、今後いかしていきたい学びはどんなことがありますか?

それは2つあって、まずは人は偏っていていいんだと感じたことです。これまでは「偏っている」と聞くと、どこかマイナスなイメージを抱きやすかったのですが、講義で偏愛マップ(※)を作って互いの偏愛を聴き合ったとき、偏りにむしろおもしろさや魅力を感じました。偏っててもいいと思えると、自分自身や他人との接し方が少し変わっていくような気がしています。


もうひとつは、「自分のペースを大事にしていい」ということです。これは他のさとのば生が言っていた言葉で、心に残っています。立ち止まった方がいいと感じた時は、周囲に流されず前へ進むのを一旦やめて休むことを選ぶ。そんな彼女のあり方がいいなと思いました。私にとっては、何かを始めるよりもやめること、誘いにYESと乗ることよりNOと言って断ることの方が難しいんです。だからこそ、自分の身体や心に無理がないペースを大事にしていきたいなと思っています。


※偏愛マップ:自分が偏って愛しているものを紙に自由に書き出したもの。




終わりに


読んでくださったみなさん、インタビューに答えてくれた玲さん、ありがとうございました。


インタビュー中、少し迷うこともありながら丁寧に答えてくれる玲さんが印象的でした。曖昧で、言葉にして掴み取ることが難しい、でも確かにそこにある大切な何かを伝えようとしてくれていたような気がします。


動き続けることで道を切り拓いてきた玲さんが、立ち止まることをあえて選択している。このことでどんな発見に出会い、どんな変化が起こっていくのか、勝手に楽しみになりました。立場を越えて共に学び続ける仲間として、「今後もよろしく!」と言いたいような気持ちです。


(聞き手:黒澤季理)